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棚卸資産の評価損計上が認められるケース
法人税法では原則として、資産価値の下落を帳簿価額で評価替えしても、損金算入は認められません。しかし、以下のような特定の事実が発生した場合には例外的に評価損の計上が可能です。
評価損計上が認められる条件
- 災害による損傷
災害によって著しく損傷し、棚卸資産の価額(時価)が帳簿価額を下回った場合。 - 著しい陳腐化
季節商品や流行性が強い商品が売れ残り、通常の価額では販売できないことが明らかな場合。 - 更生計画の認可
会社更生法による更生計画認可があり、評価替えが必要とされた場合。 - その他特別な事実
破損、型崩れ、品質変化、たなざらしなどにより、通常の販売が不可能になった場合。
評価損計上の具体例
1. 著しい陳腐化
商品の物質的な欠陥がないにもかかわらず、新製品の登場や経済的環境の変化により価値が低下した場合が該当します。たとえば、以下のような事例です:
- 季節商品: 流行性が強い夏服やクリスマスグッズなどの売れ残り品。
- 新製品の登場: 型式や性能が異なる新製品が市場に投入されたことで、既存の商品が売れ残った場合。
2. その他特別な事実
- 破損や型崩れにより正常な販売が不可能な場合。
- 廃棄が必要な場合や、処分可能価額が帳簿価額を下回る場合。
評価損の計算方法
評価損の金額は次の計算式で求めます:
評価損の金額 = 棚卸資産の帳簿価額(取得価額) – 時価(処分可能額)
処分可能額の設定
処分可能額は、実際に売却可能な価額である必要があります。以下のような証拠を準備しましょう:
- バーゲンやセールの実績: 実際に低価格で販売した記録や広告チラシ。
- 見積書や商談記録: 売却が成立しなかった証拠も有効。
廃棄処分を伴う評価損の注意点
廃棄証明の準備
廃棄処分を行う場合には、以下のような証明書類を保存する必要があります:
- 廃棄業者からの請求書や領収書。
- 廃棄品目・数量を記載した廃棄証明書。
- 廃棄状況の写真や社内報告書。
廃棄による節税のメリット
廃棄することで、余分な保管・管理コストの削減と、廃棄品に対する評価損の計上による節税が同時に実現します。
評価損計上の成功事例
ケーススタディ: 季節商品の売れ残り対策
あるアパレル企業では、夏の売れ残り商品を対象に、以下の手法で評価損を計上しました:
- 季節商品の売れ残り品をセールで販売。
- セールでも売れなかった商品について、陳腐化による評価損を計上。
- 廃棄が必要な商品については、廃棄証明書を準備し損金算入。
結果として、税負担を大幅に軽減し、在庫管理コストの削減にも成功しました。
節税を成功させるためのポイント
- 客観的な証拠の準備
実績や記録をしっかりと残し、税務調査時に適切に説明できるようにする。 - 適切な処分可能額の設定
現実的かつ妥当な処分可能価額を設定する。 - 税務専門家の活用
顧問税理士や専門家のアドバイスを受けて、法的要件を確実に満たす。
まとめ
棚卸資産の評価損計上は、特定の条件下で認められる節税方法であり、不良在庫や売れ残り品の処理を通じて法人税を削減できます。ただし、法的要件を満たし、証拠を適切に整えることが成功のカギです。顧問税理士と連携し、効果的な節税対策を実施しましょう。
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